2013-05-19 (Sun)
17:59
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日経新聞電子版で保険コンサルタントの後田亨氏が連載している『 保険会社が言わないホントの保険の話 』の中で、『メディカルkit R』を痛烈に批判している記事があります。それが、『 保険料が戻ってくる保険、こんなにある「損な条件」 』です。
この記事では様々な「損な条件」が挙げられているわけですが、腑に落ちない箇所が多々あるんですね。いやいや、そこは「損な条件」ではないだろう、と。
同記事において、以下のとおり後田氏があんしん生命の挙げるメリット3点を個別に反論していますので、その3点に対して更なる反論を挑んでみようと思います。
◆ 1-1 あんしん生命が挙げるメリット
入院給付金などの受け取りがない場合、70歳までに払い込んだ保険料が「健康還付給付金」として全額戻ってきます。
◆ 1-2 後田氏の反論
30歳で契約した場合、40年間預けて利息が発生しないのは損な条件だ。保険会社が儲かるだけだ。40年国債の利回りは2%もあるのに。
また、解約返戻金の返戻率が10年後で4割、20年後で6割なので、中途解約や死亡時に元本割れする点は損な条件だ。
◆ 1-3 後田氏の反論に対する反論
まず、『メディカルkit R』に加入しなければ、還付金のない一般的な医療保険に加入するということを忘れてはいないでしょうか。
『メディカルkit R』と預貯金を比較するのではなく、『メディカルkit R』に加入した場合と一般的な医療保険に加入して差額を積み立てた場合とを比較すべきです。
そうすれば、一般的な医療保険に保険料を払いながら(終身保障タイプにしろ定期保障タイプにしろ)40年間で還付金と同額を貯めることなど、2%の複利運用を持ってしても不可能だと分かります。
また、40年国債は個人には買えないのですから、2%の利回りを出すのは乱暴です。そして、40年間にわたって2%運用できるような書きぶりですが、40年間運用できるのは初回の保険料だけで、例えば20年後に払う保険料は20年国債での運用ということになるので40年国債の2%の利回りを前提とすることは、やはり乱暴です。(インフレターゲットの側面から2%というのなら、まぁ分かります。)
元本割れの返戻金については、損な条件でも何でもないです。
例えば、還付金がないだけで『メディカルkit R』と保障内容が全く同一の『メディカルkit』に加入して保険料の差額を積み立てたと考えた場合、『メディカルkit』が60歳払済だと『メディカルkit R』のほうが有利ですが、『メディカルkit』が終身払だと『メディカルkit R』のほうが不利です。
つまり、『メディカルkit R』の中途解約・死亡については、一般的な医療保険に60歳払で契約した場合よりは有利で、終身払で加入した場合よりは不利だということで、単に60歳払済と終身払との中間のリスクを取っている商品に過ぎません。
◆ 2-1 あんしん生命が挙げるメリット
入院給付金などの受け取りがあった場合でも、70歳までに払い込んだ保険料が受取額を上回る場合は、差額が「健康還付給付金」として戻ってきます
◆ 2-2 後田氏の反論
70歳までの入院・手術給付金は自腹を切っているようなものじゃないか。これは損な条件だ。
◆ 2-3 後田氏の反論に対する反論
反論しません。ご指摘のとおり、これは損な条件だと私も思います。この点は、『メディカルkit R』最大のデメリットで記したとおりです。
◆ 3-1 あんしん生命の挙げるメリット
入院する確率が高まる時期に、加入時のお手ごろな保険料のまま医療保障を継続することができます。
◆ 3-2 後田氏の反論
30歳男性、日額5,000円契約の場合の還付金は、満額で138万円にもなるのだから、70歳以降は『メディカルkit R』を解約して、還付金で入院に対応すればよい。
また、30歳の人にとって40年後以降の入院給付金5,000円の価値は今と違うだろうし、そもそも数十年先の入院保障を買うべきだろうか。
◆ 3-3 後田氏の反論に対する反論(ここ重要!!)
いやいや、そこは契約を継続すべきでしょう。
一読すると、正しい指摘に思えますが、70歳で解約なんてしたら、それこそ自らが1-2で指摘しているように『保険会社が利息分を儲けて』、2-2で指摘しているように『70歳までの入院を自腹切って保障して』、それで終わりじゃないですか。
医療保険の恩恵を何も受けずに終わりです。保険会社に搾取されて終わりです。(70歳までに138万円以上の入院・手術給付金を受け取れたという可能性の著しく低い場合に限ってのみ、意味のあった契約になり得ますが)
相対的に入院リスクの高い70歳以降の期間を割安な保険料で保障してもらって、そこではじめて攻守逆転、保険会社を搾取する側に回れるわけです。リスクだけとってリターンを獲らないのは、間違いです。
インフレリスクについても、少し違うように思います。何故って、終身払の保険料も、入院給付金の保障日額も生涯不変だからです。
仮に40年後に貨幣価値が半分になっていたなら、入院給付金も半分の価値しかありません。しかし、保険料負担も半分になっています。
半分の負担で、半分の保障が買えるのですから、負担と保障の比率は今と変わりません。契約を継続しない理由にはなりません。
数十年先の入院保障を買うべきかは、何も『メディカルkit R』に限った話ではなく、あらゆる終身医療保険に言えることなので、『メディカルkit R』に特有の損な条件ではありません。
それに、現役時代から入院リスクの高い老齢期に備えることは、良いことだと思います。それを貯蓄で行うか、保険で行うかは個人の判断であって、貯蓄が保険に劣るとも言えません。
この記事では様々な「損な条件」が挙げられているわけですが、腑に落ちない箇所が多々あるんですね。いやいや、そこは「損な条件」ではないだろう、と。
同記事において、以下のとおり後田氏があんしん生命の挙げるメリット3点を個別に反論していますので、その3点に対して更なる反論を挑んでみようと思います。
◆ 1-1 あんしん生命が挙げるメリット
入院給付金などの受け取りがない場合、70歳までに払い込んだ保険料が「健康還付給付金」として全額戻ってきます。
◆ 1-2 後田氏の反論
30歳で契約した場合、40年間預けて利息が発生しないのは損な条件だ。保険会社が儲かるだけだ。40年国債の利回りは2%もあるのに。
また、解約返戻金の返戻率が10年後で4割、20年後で6割なので、中途解約や死亡時に元本割れする点は損な条件だ。
◆ 1-3 後田氏の反論に対する反論
まず、『メディカルkit R』に加入しなければ、還付金のない一般的な医療保険に加入するということを忘れてはいないでしょうか。
『メディカルkit R』と預貯金を比較するのではなく、『メディカルkit R』に加入した場合と一般的な医療保険に加入して差額を積み立てた場合とを比較すべきです。
そうすれば、一般的な医療保険に保険料を払いながら(終身保障タイプにしろ定期保障タイプにしろ)40年間で還付金と同額を貯めることなど、2%の複利運用を持ってしても不可能だと分かります。
また、40年国債は個人には買えないのですから、2%の利回りを出すのは乱暴です。そして、40年間にわたって2%運用できるような書きぶりですが、40年間運用できるのは初回の保険料だけで、例えば20年後に払う保険料は20年国債での運用ということになるので40年国債の2%の利回りを前提とすることは、やはり乱暴です。(インフレターゲットの側面から2%というのなら、まぁ分かります。)
元本割れの返戻金については、損な条件でも何でもないです。
例えば、還付金がないだけで『メディカルkit R』と保障内容が全く同一の『メディカルkit』に加入して保険料の差額を積み立てたと考えた場合、『メディカルkit』が60歳払済だと『メディカルkit R』のほうが有利ですが、『メディカルkit』が終身払だと『メディカルkit R』のほうが不利です。
つまり、『メディカルkit R』の中途解約・死亡については、一般的な医療保険に60歳払で契約した場合よりは有利で、終身払で加入した場合よりは不利だということで、単に60歳払済と終身払との中間のリスクを取っている商品に過ぎません。
◆ 2-1 あんしん生命が挙げるメリット
入院給付金などの受け取りがあった場合でも、70歳までに払い込んだ保険料が受取額を上回る場合は、差額が「健康還付給付金」として戻ってきます
◆ 2-2 後田氏の反論
70歳までの入院・手術給付金は自腹を切っているようなものじゃないか。これは損な条件だ。
◆ 2-3 後田氏の反論に対する反論
反論しません。ご指摘のとおり、これは損な条件だと私も思います。この点は、『メディカルkit R』最大のデメリットで記したとおりです。
◆ 3-1 あんしん生命の挙げるメリット
入院する確率が高まる時期に、加入時のお手ごろな保険料のまま医療保障を継続することができます。
◆ 3-2 後田氏の反論
30歳男性、日額5,000円契約の場合の還付金は、満額で138万円にもなるのだから、70歳以降は『メディカルkit R』を解約して、還付金で入院に対応すればよい。
また、30歳の人にとって40年後以降の入院給付金5,000円の価値は今と違うだろうし、そもそも数十年先の入院保障を買うべきだろうか。
◆ 3-3 後田氏の反論に対する反論(ここ重要!!)
いやいや、そこは契約を継続すべきでしょう。
一読すると、正しい指摘に思えますが、70歳で解約なんてしたら、それこそ自らが1-2で指摘しているように『保険会社が利息分を儲けて』、2-2で指摘しているように『70歳までの入院を自腹切って保障して』、それで終わりじゃないですか。
医療保険の恩恵を何も受けずに終わりです。保険会社に搾取されて終わりです。(70歳までに138万円以上の入院・手術給付金を受け取れたという可能性の著しく低い場合に限ってのみ、意味のあった契約になり得ますが)
相対的に入院リスクの高い70歳以降の期間を割安な保険料で保障してもらって、そこではじめて攻守逆転、保険会社を搾取する側に回れるわけです。リスクだけとってリターンを獲らないのは、間違いです。
インフレリスクについても、少し違うように思います。何故って、終身払の保険料も、入院給付金の保障日額も生涯不変だからです。
仮に40年後に貨幣価値が半分になっていたなら、入院給付金も半分の価値しかありません。しかし、保険料負担も半分になっています。
半分の負担で、半分の保障が買えるのですから、負担と保障の比率は今と変わりません。契約を継続しない理由にはなりません。
数十年先の入院保障を買うべきかは、何も『メディカルkit R』に限った話ではなく、あらゆる終身医療保険に言えることなので、『メディカルkit R』に特有の損な条件ではありません。
それに、現役時代から入院リスクの高い老齢期に備えることは、良いことだと思います。それを貯蓄で行うか、保険で行うかは個人の判断であって、貯蓄が保険に劣るとも言えません。
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Last Modified : -0001-11-30