2022-03-27 (Sun)
12:00
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診断給付金のついたがん保険は最悪です。いまだにそうした保険が発売され続けていることに嫌悪感を覚えます。
がん保障においては、診断給付金よりも、抗がん剤などの治療をした月ごとに給付金が支給されるタイプの方がはるかに優れていると考えます。同じ保険料で両保障を比べれば、答えは明らかです。
診断給付金がどれほど無駄な保障なのか、考察します。
◆毎年の診断給付金型か、毎月の治療給付金型か
年ごとに給付金が支給される「診断給付金型」と、抗がん剤などで治療した月ごとに給付金が支給される「治療給付金型」を比較します。月額保険料を1300円程度に合わせて、診断給付金型が有利になるような治療期間設定をしつつ、次の3タイプに分けて比較します。
①:2年に1回診断給付金が支給されるタイプ
②:1年に1回診断給付金型が支給されるタイプ
③:治療した月に治療給付金が支給されるタイプ
さて、どの保障が欲しいと思われますか。
がんは、治療期間が延びるほどに家計に打撃を与えます。長期治療となれば抗がん剤治療となるわけですが、抗がん剤は高価なので支出が増えます。また、副作用もあるため、減収も見込めます。つまり、がんの長期治療は、支出増と収入減という最悪のダブルパンチに見舞われるのです。
このことを踏まえれば、どのタイプが優れているかは明らかです。治療期間が6か月を経過して以降、圧倒的に多くの給付金を得られるのは、「③:治療した月に治療給付金が支給されるタイプ」です。これを選ばずにどれを選ぶというのでしょうか。
診断給付金タイプの場合、治療が半年にも及ばない軽度がんになれば、治療費の支出に見合わないほど高額な給付金が支払われ、うれしく思うでしょう。
しかし、あなたは、軽度がんになったときに「たくさんもらえてラッキー」と思うためにがん保険に入るのですか。いいえ、違うはずです。貯蓄では耐えがたい事態に備えるために保険に加入しているはずです。
それならば、軽度がんで臨時収入を得て、重度がんで辛酸をなめるような診断給付金タイプよりも、軽度がんで相応の保障を得て、重度がんで手厚く保障してくれる治療給付金タイプを選ぶべきではないでしょうか。
抗がん剤治療は、週に数回や月に数回といった使われ方が定番ですので、毎月給付金がもらえる前提での試算は的外れとは思いません。仮に2か月に1回のペースでしか治療を受けられない状態であっても、いずれの診断給付金タイプと同等以上の給付を受けられます。臨時収入ではなく保険を欲している人にとって、診断給付金タイプを選ぶ理由は全くありません。
◆新治療法確立で、抗がん剤型は陳腐化する?
本稿に対する重大は反論は、将来的に抗がん剤を使用しない治療が普及した場合に、治療給付金型は陳腐化するのではないかということでしょう。
はい、間違いなく陳腐化します。しかし、そうなったなら新たな治療の負担を見極めた上で見直せばいいだけであって(場合によっては見直せない健康状態の場合もありますが)、そんな不確かな未来予測のために、がんになるかどうかも分からない中にあって、こんなコスパの悪い診断給付金型を選ぶ必要があるのでしょうか。
重度がんになって最高に困るのは、今まさにこのときなのです。貯蓄もなく、これからの人生も長く、これからを楽しもうっていう若年、中年期に長期療養型の重度がんになったらどうしますか。
診断給付金型では十分な保障は得られません。治療による減収があっても、家賃やローン支払い、子供の学費は待ってくれません。定期型で上乗せしたり診断給付金の保障額を2倍、3倍にすれば済む話でしょうが、それは、圧倒的高確率で訪れる平時の豊かさを犠牲にし、がんリスクにだけ過度な保障を求めることになり、あらゆるリスクに対処できる万能資産たる預貯金に向かう金額を減らすことを意味します。
また、抗がん剤治療に取って代わる新治療法が確立したとしても、それが短期間の治療で済むものならば、高額療養費制度があるのでそもそも保険は不要です。「ああ良かった、がん保険の恩恵を受けずに済んだ」と、抗がん剤保障型を解約すれば済む話です。
結局のところ問題は、新治療法が、抗がん剤治療のように長期間続き得るのか、高額療養費制度の上限に毎月達するような高額治療費を請求されるのか、治療1回当たりの拘束時間が減収につながるほど頻繁で長いのかといった点です。
まとめます。
診断給付金型を選ぶということは、抗がん剤治療の陳腐化という不確実なリスクを避けるため、コスパの悪さを受け入れる選択を行うことです。
対する治療給付金型を選ぶということは、安価な保険料で甚大な損害を保障することこそが保険の機能であり至高であるという点に重きを置き、不確実な将来については今後も新保険が出るのだから適宜見直せばよいという選択を行うことです。
私は、安価な保険料で甚大な損害に備えられるもの以外を保険として魅力的だとは決して思いません。診断給付金型を選びたい理由は理解できるものの、そうした保険としての根源的な性能を備えていない以上、治療給付金型を差しおいて診断給付金型を選んだほうが安心などと考えません。
◆初回診断給付金がゼロ円なら、話は違う
そんなコスパの悪い診断給付金タイプですが、仮に初回の診断給付金を払わずに、二回目以降から保障が開始する設計を採用したなら、その評価は一変します。
メディフィットでは、がんか上皮内がんとなった際に100万円が2年に1回もらえる診断給付金タイプの月額保険料が1,300円です。一方、ライフネット生命のがん保険「ダブルエール」では、がん100万円、上皮内がん50万円の1度きりの診断給付金の月額保険料は1,209円になります。したがって、2年に1回もらえる診断給付金タイプを構成する保険料のうち、その多くは初回の診断給付金に割かれていることが分かります。
つまり、初回の診断給付金を削った設計で売り出したなら、同じ月額保険料1,300円も払えば、二回目以降の給付金を1000万円ももらえそうな勢いの保険になるのです。仮に500万円の診断給付金しか買えなかったとしても、最初の2年間は貯蓄で対応し、3年目以降は診断給付金の偉大なる恩恵に浴することができるのです。
この設計ならば、貯蓄で耐えるべき軽度がんと、保険で備えるべき重度がんの線引きが明確で、無駄がなく、安価な保険料で甚大な損害に備えることができています。まあ、2年以上の期間を置いて軽度がんに二回罹患する場合には無駄に厚い保障になってしまいますが、現状設計よりもはるかに合理的な設計です。
ということで、初回の診断給付金を省いたタイプが発売されたなら、陳腐化リスクもないため、③のような治療給付金タイプよりも有力な選択肢となります。しかし、この場合、治療給付金タイプも追随して、最初の1年間は給付金を払わないことにして対抗するでしょうから、そうなると、改めて優劣を判断する必要があるでしょう。
◆まとめ
がん保険において、診断給付金が支払われるタイプは、貯蓄で十分対応可能な軽度がんに対して厚すぎる保障をしてしまうがゆえに、家計に危機をもたらす重度がんに対する保障が薄いため、現段階で積極的に採用する必然性が高いとは思いません。。
軽度がんに対する保障を抑え、重度がんに対する保障を厚くするためには、がん治療をした月に給付金が支給されるタイプの保険を選ぶべきです。
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Last Modified : 2022-03-28
コメントありがとうございます。大変お辛く、また先が見通せない状況、御心情は察するに余りあります。当サイトが少しでもお役に立てれば幸いです。
> これだけは最低限、お金に余裕あるならば検討、これはいらない などの保険を教えてもらえますか?
早速、回答していきます。
○これだけは最低限
旦那様に就業不能保険の追加が必要に思います。例えば、別記事で紹介していますが、アクサの「働けないときの安心」です。FWDの特約もいいと思いますので、増額できるなら、それでも構わないと思います。
不謹慎ながら、旦那様が亡くなる分には、遺族年金と収入保障保険で対応できると思います。しかし、旦那様が働けない状態となると、特に介護が必要な状態になると保障に不安がありますので、少し上乗せしたほうがいいように思います。(夫婦ともに健常な御家庭であれば、片方が片方の支えになれるので、既存契約で構わないと答えるのですが、なかなか様の場合は事情が異なるので、このように考えました。)
なお、就業不能保険といえども、FWDを含め、精神障害ではほぼほぼ役立たずなので、このようなイレギュラーな事態に対応できるように、貯蓄向上が重要だと思います。保険会社の5万円前後のプランは、貯蓄型保険の提案と思料されますが、いざ使うと元本割れで解約しにくいですし、こんな低金利下で入るような代物ではないと考えます。
○お金に余裕があるならば検討
終身年金保険です。お二人そろって障害状態で老後を迎え、かつ、長生きすることを考えると、保険料控除もあるので、終身年金保険もいいかもしれません。しかし、前述のとおり、フリーキャッシュのほうが重要なので、優先度は低いです。
○これはいらない
医療保険とがん保険です。
私が両保険の不要論者だということもありますが、仮に医療保険で加入するならチューリッヒの終身医療保険プレミアムDXの60日免責型、がん保険ならメディフィットがん保険などの月額保障金型がマシだと思います。
以上のように考えます。御参考になれば幸いです。御不安ではありましょうが、どうか余りにも高額な保険料は掛けないよう、御注意くださればと思います。
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