2022-03-25 (Fri)
19:00
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コープ共済の「たすけあい」のベーシックコースと医療コースのメリットとデメリットを含め、徹底評価していきます。
結論としては「ダメ共済」です。理由は、家計破綻リスクに備えられていないからです。以下、詳細に見ていきましょう。
◆「たすけあい・ベーシックコース」の保障内容
加入可能者:54歳以下
保障型:1年更新(65歳まで更新可)
掛金:一律3,000円
入院:日額5,000円(184日まで)
長期入院:30万円(要270日継続入院)
手術:3・6・12万円
事故後遺障害:4~100万円
病気死亡・重度障害:300万円
事故死亡・事故重度障害:上記プラス100万円
家族死亡・家族重度障害:1・2・5万円
住宅災害:3・15・30万円
備考:2020年度の割戻率は20.4%
◆「たすけあい・医療コース」の保障内容
ベーシックコースの掛金を1,000円値引きする代わりに、病気死亡・重度障害保障を300万円から10万円に大幅減額させたものが医療コースです。これ以外の変更点としては、事故通院保障の追加、手術保障の減額、家族死亡・家族重度障害の削除、加入可能年齢の引上げがありますが、特段取り上げる必要もない小粒なものです。
いずれにせよ、これから批判するポイントを医療コースもしっかり抑えていますので、併せて捉えてくださればと思います。
◆不思議な不思議なR4000円コース
冒頭に掲げたのはベーシックコースの「R3000円コース」なのですが、掛金1,000円アップの「R4000円コース」も存在します。掛金が1.3倍なので、保障も1.3倍になるのが常識ですが、この常識を打ち破る不思議な設計となっています。
R4000円コースは、R3000円コースと比べて保険料は1.3倍ですが、入院と長期入院保障は1.4倍、手術保障は1.6倍、事故死亡と事故障害保障は2倍と全体的に大変お得になっています。家族死亡と住宅災害補償だけは1倍と変化はありませんが、このデメリットだけで1.3倍超のメリット全てを帳消しにはできないように感じますね。その分R3000のほうがR4000よりも割戻率が高いのかと思ったのですが、2020年度の割戻率はほぼ同じで、むしろR4000のほうが0.5%ポイント上回っているのです。
どうせ加入するならR4000のほうがお得だと判断しています。
◆デメリット1:無駄な短期・少額保障たち
まず、入院保障についてですが、家計が危機に瀕するのは長期入院であるため、長期入院保障を別枠で設けている点は評価に値します。しかし、継続入院が条件にされており、入退院を繰り返してしまった場合の保障に難があります。
また、年単位の入院という家計破綻リスクが著しく増加するリスクに備えられていないことも問題です。短期入院は貯蓄でも対応できますが、長期入院には保険がなければ耐えられません。掛金の多くが割かれている184日の入院保障をなくし、一定期間の通算で270日以上の入院をするような不幸があった場合に、数百万をドカッと受け取れる設計のほうがはるかに有意義です。
また、手術保障は要りません。何度も何度もするわけでもないので、高額療養費制度を踏まえれば、こんなものは貯蓄で十分対応可能なものであって、わざわざ保障してもらう必要はありません。同じように、家族死亡時の見舞金のような少額な保障は要りません。
住宅災害保障についても、そんな少額は不要です。家屋は数百万から数千万円するのですから、別途火災保険で備えているのが通常なので、わざわざ介入してこなくて結構です。こうした保障は一切不要ですので、その分掛金を下げてもらいたいところです。
◆デメリット2:事故保障の厚化粧
「たすけあい」のような多くの保障を詰め込んだ共済全般に言えることですが、事故保障による厚化粧に私は嫌悪感を抱きます。どうして事故障害は保障するのに病気障害は保障しないのか、どうして事故死亡なら上乗せがもらえるのか疑問ではないですか。事故なら相手方がいる可能性があるので、相手方から補償を得られる可能性があるため、むしろ病気よりも保障は少なくていいはずです。
また、65歳未満の障害者手帳所持者に行った調査によれば、障害の原因が「事故」と答えた者は7.5%で、「病気」の36.4%に大きく劣っています。ちなみに、「その他」と「分からない」で計50%にもなります。また、65歳未満の死亡者総数のうち不慮の事故で亡くなった者はたったの4%です。ちなみに、最高率は5-9歳の16%(事故死49人)、最低率は60-64歳の3%(事故死1199人)です。
事故よりも圧倒的に病気の方が障害になりやすく死亡しやすいのに、どうして事故を厚く保障するのか理解に苦しみます。結局、消費者にいろいろな保障があると見せかけるためだけに、わずかな掛金で保障できる事故保障を多数採用しているにすぎないと考えます。
若者の多くは健康ですから、自分が障害を負ったり死亡するなら事故の可能性が高そうだと考えている者も多いでしょう。そうした若者には、事故保障という言葉が刺さってしまうので、安易に加入してしまいます。事故保障を掲げるのは構いませんが、病気保障に比べて圧倒的に価値が低いことを示すべきです。
◆デメリット3:一律掛金の弊害
そうして取り込まれた若者たちに待ち構えているものが、一律掛金という名のトラップです。普通に考えれば明らかですが、一律掛金ということは、病気になりやすく死にやすい60歳代や50歳代にとって圧倒的に有利な設計です。したがって、若者たちにとっては最高に劣悪な設計で加入させられているということです。
こうした60歳や50歳の人たちは、本来払うべき掛金を払わずに様々な保障の恩恵に浴しています。一方の若者は、見ず知らずの60歳や50歳に保障を提供するために、本来払うべき掛金よりも多くを支払っているのです。こうした格差は男女間でもあります。こんなことが許されるでしょうか。
「みんな同じ掛金、みんな同じ割戻金。分かりやすくて良いでしょ?」では済まされないのです。どうして金銭的余裕も病気や死亡リスクも低い若者が過大な負担を負わねばならないのでしょうか。一律掛金なんていう不公平、不平等な設計は即刻中止し、性別と年齢群を分けた掛金設計か、割戻率にリスクに応じた格差を設けるべきです。
◆まとめ
以上のように、「たすけあい」は加入に値する価値はないと考えます。ただし、50歳頃から満期年齢の64歳まで加入するという選択はあり得ます。若者たちによる掛金の実質的な寄附制度があるため、こうした年齢での加入は価値あるものになります。
とはいえ、「たすけあい」は、保障面での魅力不足は否めませんので、生活破綻リスクに備えるための真の意味での「保険」や「共済」を求める方にとっては選択肢になり得ません。貯蓄で対応可能なことにまで共済が首を突っ込んでくる必要はないのです。
※参考資料:障害については、厚労省の平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)より「第30表障害者手帳所持者等、障害の原因(複数回答)別」による。事故死者については、厚労省の2020年人口動態調査の「死因(死因年次推移分類)別にみた性・年齢(5歳階級)・年次別死亡数及び死亡率(人口10万対)」より、死亡総数と不慮の事故死亡総数を比べたものによる。割戻金については、生活クラブ共済連HP「2020 年度決算における《たすけあい》コース別割戻金」による。
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Last Modified : 2022-03-25