2022-01-21 (Fri)
20:07
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平均入院日数は、あくまで「平均」なのです。全年齢の平均が1か月足らずでも、私たちはやがて高齢者になります。高齢になれば全年齢の平均の数字なんてものは役に立ちません。高齢者には高齢者の平均があります。
また、終末期医療まで平均に含めて考えてしまってよいのでしょうか。日本では多くの方が病院で亡くなります。亡くなるまでの入院日数が、全年齢のあらゆる入院を含んだ平均である1か月足らずの入院日数で済むとお思いですか。
以下、平均入院日数は正しく捉え、医療保険の入院保障日数を60日にするか120日にするかという悩みの解消につながるように説明していきます。
◆年齢別の平均入院日数、転院率
私が言いたいことは、全てこの表に詰まっています。平均入院日数が29日だから医療保険の入院日数は60日型でいいとよく聞きますが、それはおかしいと言わざるを得ません。歳を重ねるごとに私たちの平均的な入院日数は延びていくのです。どの年代でも過半数の患者が60日以内に退院できるのは事実です。しかし、高齢になるにつれて2か月以上、1年以上入院してしまう患者は増加していくのです。こうなると、60日型の一般的な医療保険では全く歯が立ちません。
更に問題を深くさせるのが転院です。平均入院日数では、他の病院で入院するために転院した患者が「退院」と扱われています。転院する患者の平均入院日数が比較的長いのも危険ですが、転院先でまた平均入院日数ぐらい入院するなら、これは医療保険では長めの保障日数を確保しておくべき十分な理由になります。そして、転院する割合も高齢者のほうが多いのです。
転院に加え、一時退院という問題もあります。一時的に家庭に帰らせてもらっただけで、またすぐに入院しなければならない患者です。こうした患者の数は把握できませんでしたが、転院割合と同程度であろうという推測は可能です。
こうした転院や一時退院があっても、その都度医療保険も入院保障日数をゼロから算定し直してくれれば問題ないかもしれません。しかし、医療保険では、半年程度のインターバルを置かない退院は通算する扱いなので、やはり長めの保障日数を確保しておかねばならないのです。
◆平均入院日数の短期化は?
そうは言っても、調査のたびに平均入院日数が短期化していることは事実です。だから、今後の短期化をも見据え、最低限の保障日数を抑えておけばよいと考えることも可能です。
平成11年の全年齢の平均入院日数は39日でしたが、最新の平成29年には29日にまで短期化しています。75歳以上は67日から44日に、90歳以上は125日から67日に短縮されています。しかし、入院中に永眠される方は143日から149日に微増しています。終末期医療の入院の短期化はうまくいっていないようです。また、全年齢の転院割合を見てみると、平成11年に4%だったものが、平成29年には6%に悪化しています。
以上のように、全体的に平均入院日数が減少してはいるものの、終末期医療の入院短期化には成功しておらず、転院する確率も上昇していることが分かります。長期入院患者の中には、医療保険では保障されないいわゆる社会的入院の患者も一定数含まれるでしょうし、今後も入院日数は減少してはいくでしょうが、少なくとも60日型で安心だとは言い切れないでしょう。政府が将来的に入院ではなく在宅医療を増やそうとしているという医療保険における別の問題もあるものの、現段階において医療保険の保障日数を短くして節約したほういいとは思いません。
◆医療保険の保障日数は何日を選べばよいか
では、医療保険の保障日数は、60日型120型などがありますが、何日型を選べばよいのでしょうか。あまりよい答えではありませんが、私はなるべく長いものをおすすめします。少なくとも平均入院日数の誤解は解けたと思うので、60日型で安全、安心とは思っていないでしょうから、もっと長いものを選んでいただければと思います。120型でも3大疾病入院無制限でも、保険料はあまり増えません。そこはケチる場所ではないと分かっていただければ十分です。
最近では365日型はおろか180日型すら全然見かけなくなってきて、長期入院に備える医療保険は減少傾向です。保険会社としては、短ければ短いほど不確定要素が減るので好ましいのでしょうけれども、個人的には残念でなりません。
これからも入院期間は減少していきますので、無理に180日型や365日型を探す必要は高いとは思いません。だからせめて、いいなと思った医療保険があったなら、入院保障日数を増やす特約を検討してくださればいいなと思います。
なお、勧めるわけでは決してありませんが、メットライフ生命やソニー生命、チューリッヒ生命の医療保険には365日型以上で設計できるものがあります。
参考:厚労省「平成29年患者調査」「平成11年患者調査」。なお、「入院中の永眠」については、退院後の行き先が「その他(死亡・不明等)」になっているもの。
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Last Modified : 2022-01-21
AKI様、コメントありがとうございます。お尋ねについては、以下のe-statの各種年齢別の統計を組み合わせたものとなっております。幾つかにわたるので、個別にお示ししにくいところですが、もし不明ならば、改めて対応させていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450022&tstat=000001031167
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