2015-09-09 (Wed)
08:28
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医療保険の入院保障日数と言えば『60日』が一般的でした。しかし、最近では、『30日間』や『40日間』に減らしたプランが多数登場してきました。
具体的には、三井住友海上あいおい生命の『新医療保険A』や、チューリッヒ生命の『終身医療保険プレミアムDX』、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の『女性保険フェミニーヌ』などです。
このような保障期間の短期化には、その必要性に強い疑問を持ちますので、少し考えてみましょう。
◆なぜ30日型を推すのか
保険会社が30日型を推す理由は、『入院は短期化が進んでいるから30日型で十分』というものです。
この後に、『でも、ガンとか7大疾病は入院が長期化するので、そこは長期保障しよう』と続くこともありますが、この部分は私としては『言っていることは正しいが、それならむしろ長期保障すべきは7大疾病以外(=精神疾患)でしょ?』ということで、この論理には賛同しかねます。(詳しくは「新CURE(新キュア)は3大疾病の不安を煽りすぎ」)
そんな30日型推進保険会社は、このような図で30日型の合理性を訴えてきます。

チューリッヒ生命の終身医療保険プレミアムDXより
ほほう。確かに平均入院日数は短いし、8割の人が30日以内に退院しているので、30日も保障してくれれば十分そうです。
しかし、こんな世迷い言に騙される私達ではありません。そうでしょう? 保険会社に5つ指摘しておきましょう。
◆平均入院日数の短い統計を使わないで。
上の図において、左右の出典が違う理由は何故なのか。
左図の平均入院日数は『30.6日』であるが、右図の出典情報から平均入院日数を調べると、『34.3日』である。
算出方法が異なるので、値に差異があるのは致し方ないが、平均入院日数算出に当たっての信頼度としては、計算式からして後者の統計情報のほうが優れていると考える。
これでは、30日型を推進したがいために意図的に『30.6日』を選んだと消極的に解さざるを得ず残念である。
同様に、一般病床のみの入院の平均についても、『17.2日』ではなく『18.9日』のほうが実態に近いと考える。
◆80歳の平均入院日数は45日ですけど。
全年齢の平均入院日数は『30.6日』とのことだが、入院患者の多くは高齢者なので、高齢者の平均入院日数を知ることは重要である。
そこで、平均寿命近辺の80~84歳の平均を調べると、『45.5日』である。また、4人のうち3人は病院で死を迎える現状を鑑みると、今後も入院期間の短期化が見込まれるとは言え、30日型で足るというのはミスリードではないか。
◆転院や入退院が加味されていませんが。
別の病院に移動する『転院』や、退院後早期の病状悪化に伴う『再入院』の扱いについて、平均入院日数の計算方法と、医療保険の保障日数の計算方法とでは、差異がある。
この差異を補正しないと、平均日数がかなり短く計算されてしまうため、医療保険の説明で用いる平均入院日数としては相応しくない。
平均入院日数『30.6日』ではミスリードだと考える。(詳しくは「本当の平均入院日数をお教えしましょう」)
◆30日程度の短期入院に保険って本当に必要ですか。
そもそも「保険」とは、極めて低確率で起こる極めて損失の大きい事象に対して、僅かな保険料で備えるもので、そこが本質であると考える。
では、30日程度の入院は保険で備えるようなものであろうか。私は、この程度の損失は「保険」ではなく「貯蓄」で備える性質のものだと強く思う。(詳しくは「【まとめ】医療保険の考え方・選び方」 )
◆31日以上の入院にこそ保険が必要でしょ。
上述の「保険」の本質を踏まえれば、保険で備えるべきは、むしろ31日以上の長期間に及ぶ入院であると言える。(詳しくは「【まとめ】医療保険の考え方・選び方」)
◆まとめ
ここまでで保険会社に対する5つの指摘が終わりました。私の意見は既に明らかなとおり、保険会社が30日型を勧める論拠は説得力に欠けますし、そもそも30日程度の短期入院に医療保険は必要ない、というものです。
医療現場の入院短期化は大変喜ばしいことですが、それに伴って医療保険の保障日数まで短くする必要はないと思います。むしろ、入院5日間免責などとしていた初期の医療保険の設計趣旨に回帰して、そろそろ短期入院を補償しない保険が多々開発されるようになると嬉しいですね。
※参考資料;入院日数について「平成23年 患者調査」、死を迎える場所について「平成26年 人口動態統計」
具体的には、三井住友海上あいおい生命の『新医療保険A』や、チューリッヒ生命の『終身医療保険プレミアムDX』、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の『女性保険フェミニーヌ』などです。
このような保障期間の短期化には、その必要性に強い疑問を持ちますので、少し考えてみましょう。
◆なぜ30日型を推すのか
保険会社が30日型を推す理由は、『入院は短期化が進んでいるから30日型で十分』というものです。
この後に、『でも、ガンとか7大疾病は入院が長期化するので、そこは長期保障しよう』と続くこともありますが、この部分は私としては『言っていることは正しいが、それならむしろ長期保障すべきは7大疾病以外(=精神疾患)でしょ?』ということで、この論理には賛同しかねます。(詳しくは「新CURE(新キュア)は3大疾病の不安を煽りすぎ」)
そんな30日型推進保険会社は、このような図で30日型の合理性を訴えてきます。

チューリッヒ生命の終身医療保険プレミアムDXより
ほほう。確かに平均入院日数は短いし、8割の人が30日以内に退院しているので、30日も保障してくれれば十分そうです。
しかし、こんな世迷い言に騙される私達ではありません。そうでしょう? 保険会社に5つ指摘しておきましょう。
◆平均入院日数の短い統計を使わないで。
上の図において、左右の出典が違う理由は何故なのか。
左図の平均入院日数は『30.6日』であるが、右図の出典情報から平均入院日数を調べると、『34.3日』である。
算出方法が異なるので、値に差異があるのは致し方ないが、平均入院日数算出に当たっての信頼度としては、計算式からして後者の統計情報のほうが優れていると考える。
これでは、30日型を推進したがいために意図的に『30.6日』を選んだと消極的に解さざるを得ず残念である。
同様に、一般病床のみの入院の平均についても、『17.2日』ではなく『18.9日』のほうが実態に近いと考える。
◆80歳の平均入院日数は45日ですけど。
全年齢の平均入院日数は『30.6日』とのことだが、入院患者の多くは高齢者なので、高齢者の平均入院日数を知ることは重要である。
そこで、平均寿命近辺の80~84歳の平均を調べると、『45.5日』である。また、4人のうち3人は病院で死を迎える現状を鑑みると、今後も入院期間の短期化が見込まれるとは言え、30日型で足るというのはミスリードではないか。
◆転院や入退院が加味されていませんが。
別の病院に移動する『転院』や、退院後早期の病状悪化に伴う『再入院』の扱いについて、平均入院日数の計算方法と、医療保険の保障日数の計算方法とでは、差異がある。
この差異を補正しないと、平均日数がかなり短く計算されてしまうため、医療保険の説明で用いる平均入院日数としては相応しくない。
平均入院日数『30.6日』ではミスリードだと考える。(詳しくは「本当の平均入院日数をお教えしましょう」)
◆30日程度の短期入院に保険って本当に必要ですか。
そもそも「保険」とは、極めて低確率で起こる極めて損失の大きい事象に対して、僅かな保険料で備えるもので、そこが本質であると考える。
では、30日程度の入院は保険で備えるようなものであろうか。私は、この程度の損失は「保険」ではなく「貯蓄」で備える性質のものだと強く思う。(詳しくは「【まとめ】医療保険の考え方・選び方」 )
◆31日以上の入院にこそ保険が必要でしょ。
上述の「保険」の本質を踏まえれば、保険で備えるべきは、むしろ31日以上の長期間に及ぶ入院であると言える。(詳しくは「【まとめ】医療保険の考え方・選び方」)
◆まとめ
ここまでで保険会社に対する5つの指摘が終わりました。私の意見は既に明らかなとおり、保険会社が30日型を勧める論拠は説得力に欠けますし、そもそも30日程度の短期入院に医療保険は必要ない、というものです。
医療現場の入院短期化は大変喜ばしいことですが、それに伴って医療保険の保障日数まで短くする必要はないと思います。むしろ、入院5日間免責などとしていた初期の医療保険の設計趣旨に回帰して、そろそろ短期入院を補償しない保険が多々開発されるようになると嬉しいですね。
※参考資料;入院日数について「平成23年 患者調査」、死を迎える場所について「平成26年 人口動態統計」
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Last Modified : 2015-09-09